013 同一レコードを複数ユーザが同時に変更してしまうのを防ぐには?
こんにちは、id:EC-OneのAkiです。
梅雨も明けて30度を超える暑い日が続きますが、みなさんいかがお過ごしですか?
アイスの食べ過ぎは夏バテの元ですよ!
今回は、Webアプリケーションのちょっと生っぽい実装テクニックのお話です。
同一レコードを複数ユーザが同時に変更してしまう?
データベース内の特定のレコードを変更するWebアプリケーションを考えてみます。たとえば、「取引先マスタの変更」を行うアプリケーション等です。
この場合、このアプリケーションは以下のような流れになるでしょう。
- ユーザがデータ編集画面に入るボタンをクリック。
- サーバが現在のデータをデータベースから取得&返却し、それをユーザのブラウザが表示する。
- ユーザがデータを編集し、編集結果反映ボタンをクリック。
- このとき、変更した項目も変更していない項目も一緒にサーバに送られる。
- サーバが編集結果をデータベースに反映する。
- このとき、変更した項目も変更していない項目も一緒にデータベースに反映(上書き)される。
上記の流れには、実は「編集開始から編集結果反映までの間に他のユーザもそのデータを変更できる」という問題があります。
たとえば、こんなことが起こりえてしまうのです。
- Aさんがデータ編集画面に入る。
- Bさんもデータ編集画面に入る。
- Aさんが項目Aを編集して編集結果反映を行った。
- Bさんが項目Bを編集して編集結果反映を行った。
この時、最後のBさんの操作によって、直前にAさんが編集した項目Aは元の値に戻ってしまうのです!
クラサバなら出来たこと、Webだと出来ないこと
昔のクライアント/サーバ型のアプリケーションであれば、クライアントが編集を行っている間、当該レコードをロックしておいて他のユーザが編集を開始する事を防ぐ、という手法もありました。クライアントが今もそこにいて編集中である、という事はTCP接続が保持されていることで保証できていたからです。
しかし、Webアプリケーションは、1リクエスト処理毎に一旦サーバとクライアント(ブラウザ)の会話が一旦切れるのが普通です。(TCP接続が複数リクエストをまたがって保持されていても、HTTPプロトコルとしてはやはり1問1答です)
そのため、データベースのトランザクションも1リクエスト処理毎に一旦終了するのが普通なので、「編集開始」リクエストと「編集結果反映」リクエストの間をまたがってレコードにロックをかけたままにするのも簡単には出来ません。わざわざ「ロック中であることを示すカラム」を作ってそれを参照/更新する、等の作りこみが必要になってしまいます。
しかも、Webアプリケーションには、「クライアント(ブラウザ)が今でもそこにいるのかわからない」「編集を開始した後、ブラウザを終了してしまったかもしれない」という事情があります。「ロックを開始したまま、帰ってくるかわからないクライアントを待ち続ける」事は現実的でないのです。
更新カウンタを使った先勝ち排他
こういった場合に使える方法があります。それは、
「先に更新した人を優先する。後から更新した人には『他の人が先に更新してしまいました』メッセージを表示する」
というものです。
この場合、後から更新した人は再度編集画面に入りなおし、最新のデータを元に編集作業を再開してもらう事になります。
では、その実現方法を以下に示します。
- データベースの当該テーブルに「更新カウンタ」という数値型のカラムを作成する。
このカラムは、当該レコードが更新されるたびに値を+1する。- 編集開始時、データベースから取得した「更新カウンタ」の値を、編集画面のHTMLのhiddenに保持しておく。
- 編集結果反映時、update SQLで以下を行う。
- whereに「現在の更新カウンタの値が編集開始時の値であること」という条件を追加する。
(編集開始時の値=HTMLのhiddenに保持していた値)- 更新カウンタの値を+1する。
- update SQLの実行結果をチェックし、「更新レコード数が1である事」を確認する。
- もしも先に更新した人がいれば、where条件がマッチしないので、更新レコード数は0(ゼロ)になるはず。
上記のupdate文は以下のようになります。
update TABLE1 set ..., UPDATE_COUNTER=mod(?+1, 100) where ... and UPDATE_COUNTER=?
「UPDATE_COUNTER」が更新カウンタのカラム名です。2箇所にある「?」には、HTMLのhiddenに保持していた値をバインド(はめ込み)します。
また、mod()関数を使っているので、UPDATE_COUNTERは0〜99を循環するのみで、100以上になる事はありません。
泥臭くても実用度は高い
ずいぶんと泥臭い方法だな、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この方法は実現が簡単であるため、同じレコードを複数ユーザが同時に編集する頻度がさほど高くない場合には、意外に良く使われています。現場の知恵とでも言いましょうか・・・
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